輸入車
更新日:2024.04.22 / 掲載日:2024.04.22

【アルトゥーラ スパイダー】マクラーレンの技術が生んだ夢のオープンスポーツ

文●石井昌道 写真●マクラーレン、石井昌道

 4月13日、マクラーレン・オートモティブの国内7カ所目となる正規販売拠点のマクラーレン横浜がオープン。それと同時にアルトゥーラ・スパイダーが国内で初披露された。マクラーレン横浜は高級車ディーラーが軒を連ねるみなとみらい地区のなかでも、昨年オープンした世界最大級の音楽アリーナであるKアリーナと同敷地内という、新たな盛り上がりをみせるスポットに位置している。

UK本国からは、マクラーレン・オートモーティブ、チーフ セールス&マーケティング・オフィサーのジョージ・ビッグス、そしてAPAC・中国担当 マネージング・ディレクターのポール・ハリスが駆けつけ、祝福の辞を述べた。また日本代表の正本 嘉宏によるプレゼンテーションも行われた

 アルトゥーラ・スパイダーはマクラーレン初のハイパフォーマンス・ハイブリッド・コンパーチブル。そのデビューにあたり、既存のクーペモデルとともに大幅なアップグレードが施されている。クーペに対しての重量増はわずか62kgに抑えられ、ルーフの開閉は50km/h以下なら走行中に可能で11秒で完了するという早技だ。

 そもそもアルトゥーラは2021年にデビュー。スーパースポーツも電動化を推し進める必要があるが、マクラーレンは既存のモデルを電動化するのではなく、新たにハイブリッド専用のプラットフォームであるMCLA(マクラーレン・カーボン・ライトウェイト・アーキテクチャー)を開発し、その初出モデルがアルトゥーラとなった。エンジン・トランスミッションを含めたパワートレーンやサスペンションなどもすべて新規開発。2010年に12Cとともに立ち上がったマクラーレン・オートモティブの歴史のなかでも、もっとも大規模な開発となったであろう。これまでも2013年のP1や2019年のスピードテールなど、より高価で生産台数も少ないハイブリッドは発売してきたが、量産モデルはアルトゥーラが初であり、今後は大きな柱となっていく見込みだ。

 アルトゥーラがこだわっているのはハイブリッド化に伴う重量増というネガティブを消し去る軽量化、そしてモーターの特性をパフォーマンスアップへ繋げていくことだ。あえてプラグイン・タイプとしているのは、重量は抑えたいけれどもパフォーマンスアップに効率的に繋げていくには、ある程度の電力量が必要だからという考えもあるのだろう。

 エンジンもMCLAに相応しいユニットを新規開発。モーターがパワーサプリメントとなるためダウンサイジングのV6ターボとなるが、従来のV8ターボに比べて約50kg軽く、120度と広角バンクなのは低重心化のため。バンク内にタービンを納めるホットVレイアウトとなるが、面白いのはそこで発生する熱を直接的に放出するエアアウトレットがリアデッキに見られることだ。

Vバンク内に配置されたタービンの熱はリアデッキに設けたエアアウトレットから排出される

 トランスミッションは8速DCTでリバースギアをなくして軽量化。バックはモーターを逆回転することで可能になっている。モーターはアキシャル型とよばれる軽量コンパクトなもので最高出力95PS、最大トルク225Nm。エンジンの585PS、585Nmと合わせたシステム総合では680PS、720Nmに達していた。バッテリーは7.4kWhで31kmのEV走行が可能となっている。

 プラットフォームやパワーユニットなどだけではなく、車載ネットワークシステムを従来のCAN-BUSからイーサネットへと換装したのもアルトゥーラの特長だ。ローカルのインターネット・ネットワークなどで広く用いられてきたイーサネットは、自動運転およびADASやコネクテッドなどの広がりとともに膨大なデータ処理が可能として車載用として脚光を浴びている。さらに一対のペアケーブルで双方向通信が可能であり、CAN-BUSに対して軽量化が可能。アルトゥーラでも25%軽量化がなされるとともに積極的にADASを搭載し、デイリーユース性を高めたのもアルトゥーラの特長となった。

 PHEVシステムは130kgほどあるが、車両重量は乾燥重量で1395kg、DIN規格で1498kgに収まっている。一般的なエンジン車とさほど変わらぬ重量だ。

 アルトゥーラ・スパイダーの車両重量は乾燥重量で1457kg、DIN規格で1560kg。リトラクタブル・ハードトップを採用したにもかかわらず62kgの重量増に収まっている。この種のモデルは後方視界が悪くなりがちだが、ガラス張りのリアバットレスを採用して視認性を高めた。オープン時のハードトップはエンジンの上部に収納されるが、冷却性を確保するためクーペにはない4つのエアアウトレットが新設されている。

 従来のクーペからアップデートされたのは、まずエンジンが605PSとなりシステム出力は700PSに。それと同時にトランスミッションの変速スピードは25%早められた。

 プロアクティブ・ダンピング・コントロール・サスペンション・システムの応答速度は最大90%向上し状況に応じてより適切なダンピングがなされるという。スポーツドライビング時のコントロール性も日常での快適性も向上しているはずだ。

 ADASでは新たにブラインド・スポットモニタリングとクロストラフィック・ディテクションを標準装備。スーパースポーツは視界が良くなくて運転しづらいというイメージがあるが、アルトゥーラは物理的な視界を最大限確保するとともにADASも充実しているのでそんなことはない。レーシングカーでもドライバーの能力を最大限に引き出すため、視界や快適性にもこだわるマクラーレンのDNAが生きているのだ。

 都市部でありがたい極めて静かなEV走行をこなすことも含め、デイリーユース性に優れたアルトゥーラにとって、オープンエアモータリングも堪能できるスパイダーは理想的な組み合わせだろう。

この記事の画像を見る

この記事はいかがでしたか?

気に入らない気に入った

石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

この人の記事を読む

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

この人の記事を読む

img_backTop ページトップに戻る

ȥURL򥳥ԡޤ